インタビュー

interview

第三回

映画監督

朝原雄三さん

上板橋スタジオを選んだ理由

実際に営業している店舗を借りて撮影する案もありました。でも結局は店や周辺環境に気を使ったり、撮影時間が限られることにもなります。そういう意味でいうと、気持ちも準備も楽なスタジオのほうがメリットが大きくなります。

控え室、衣装替えや準備の支度部屋、駐車場と撮影に必要なベースが揃っているのも実店舗では難しいところですし。

『釣りバカ日誌 新入社員 浜崎伝助』の場合は、制作部が思っているよりも上板橋スタジオでの撮影が増えてしまったんです。お店のイメージもバッチリ合いました。サラリーマンのドラマなのでオフィスのシーンがメインになるかと思いましたが、だんだんここで撮ったものばっかりになってしまったし……。そういうものなんですよ。

上板橋スタジオを使ったことで便利に進められた撮影もたくさんありました。料理のコーナーがあって別場所を確保する予定でしたが、2階のキッチンでまかなうことができました。あと、シャワーがあることを知り「シャワーシーンを作って次に行けば、つじつまが合わせられる」と追加で撮影したことも。まさにロケーションがシナリオを足していった例といえます。

映画の時代から「シナリオは2の次3の次、現場が優先」というスタイルで撮っています。その意味では常に発見というか、柔軟に進めることが大事だと思っています。元々撮る場所として予定のなかった上板橋スタジオの2階・和室も浜崎の実家として急に使うようになったりと、便利に使わせていただきました。

撮影を進めるうちにこの作品の重要な拠点となりましたね。『男はつらいよ』でいえばとらや、『釣りバカ日誌』でいえば伝助とみち子さんの家、それが今回は上板橋スタジオ(笑)

若いクリエイターへ

根気や根性はどうしても必要になります。決して生易しい仕事ではないし、多くの雑用や下働きの積み重ねで作品は作られていくものです。監督やプロデューサーになっても楽ができる仕事ではないですが、なぜ続けられるかというのは、好きだということしかありません。好きにならなければいけないし、好きであり続ける努力も必要です。結局勉強を続け、知識や技を深めていくしかないんですよね。

私自身は温室育ちで恵まれてきた側面があるかもしれません。作品にも現場にもスタッフにも雇用形態にも恵まれて、30年近く続けることができました。本当にラッキーだったひとりだと思っているので、「次は若いスタッフにいい思いをさせるために頑張らなきゃ」と、心では思っています。現場での態度に出ているかは分かりませんが(笑)。

そう思っている年配のスタッフは多いんです。若い人たちは年の差を考えずにぶつかり合って仕事をしていってほしいと思います。 先輩たちは決して行儀がいい人たちではないですが、杓子定規ではない「面白さの部分」で人生を過ごしてきた人たち。そこは仲間だと思って飛び込んできてくれれば、きっと応えてくれます。お互い、作品作りが好きな人間同士でもあるのですから。

1 2
 
ページトップへ戻る